ながいひとりごと

主に映画の感想を書きます。

古い西部劇ヒーローみたいな『ブラック・アダム』

劇中、テレビに『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』(The Good, The Bad, and The Ugly)が映り、のちにはその決闘のパロディシーンもあるだけでなく、全編を通しブラックアダムは西部劇のヒーローのように描かれている。自分のやり方を曲げない、頑なでクールな感じというか。一方で昔気質ともいえる。

テス・アダムのやり方は、たとえ悪人でも命は大事にというジャスティソサエティのやり方とは全く違う。最初は攻撃してくるものなら何でも、次第に仲間意識を持った人々を守るためなら、生死については無視して攻撃を加える。最終的にはジャスティソサエティの面々と認め合うものの、映画全体としては、カーンダックの人々が求めてたのはブラックアダムだったし、彼のやり方で上手くいったね、という風にまとまっている。 この話の言いたいことは「側から見て古くて乱暴なやり方をしてる人でも、いろんな事情があるし、その人が誰か他の人を守ろうという利他的な気持ちを持ってる人、いわゆる良い人なら、外野がそのやり方・手段を矯正する必要はない」ということだと思う。そして「自分たちのことは自分で決めさせろ」というと聞こえはいいが、閉鎖的で融和は目指していない。この映画全体の頑なさは最近のヒーロー映画ではあまり見かけないものだ。

ただ、そういう閉鎖的なテーマをそのまま提示するのは微妙だったのか、ジャスティソサエティが象徴する、多様なメンバーで協力しあう包摂性なども持ち上げようとしていて、その結果ゴチャゴチャとした映画になっていた。