ながいひとりごと

主に映画の感想を書きます。

映画

ままならない身体と力強いラストシーン『バービー』

www.youtube.com 映画『バービー』は有名な人形である「バービー」たちのひとりが自身の暮らす「バービーランド」を飛び出し、人間界へとやってくる物語である。主人公の「典型的バービー」(以下バービー)は複数の面における人間の女性の身体のままならな…

『逢びき』と『別れる決心』に見られる絶妙なズレ

www.youtube.com www.youtube.com 『逢びき』はいくつかの「ズレ」ともいえる性質を持ち合わせている。劇中では、各々の家へと帰るため、アレックの乗る列車とクレアの乗る列車の発車時刻には数分の「ズレ」があるというのが代表的だ。 作品の構成としては、…

境界の攪乱と『アラビアのロレンス』

www.youtube.com 『アラビアのロレンス』において、「境界」を超えようとすること、攪乱しようとすることは全体を貫いており、そこには複数の要素を読み取れる。 主人公ロレンスはイギリス人であるが、"アラブ人"あるいは、どちらでもない超越した存在に成ろ…

落ち着いているように見えて実はスポ根?『ケイコ 目を澄ませて』

www.youtube.com 『ケイコ 目を澄ませて』は終始落ち着いたトーンで語られる映画だ。しかし、中心となる部分は熱血的なものであるように思う。 中盤、主人公ケイコはボクシングを一度休みたいという思いを抱えつつも、それを所属するジムの会長に打ち明ける…

役割から自由になるための個人的な愛『戦場のメリークリスマス』

www.youtube.com 以前、クリスマスという要素に沿って『戦場のメリークリスマス』について書いてみたことがあったが、 purepuppy.hatenablog.jp 再鑑賞したので、纏まらないながらもまた書いてみたいと思う。 カネモトとデ・ヨンの事件が示すこと 当初は加害…

「完璧」ではないことの意味『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』

www.youtube.com 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズは、スーパーヒーロー映画でありながら、時に「悪趣味」と言われる描写を含んだシリーズである。その三作目である『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』は、「完璧」を掲げる悪役と…

情報的にはあまり新しくないが…『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』

www.youtube.com デヴィッド・ボウイのドキュメンタリー映画だが、彼を題材とした他のドキュメンタリー(例えばBBCによる『デビッド・ボウイ 5つの時代』など)と異なり、語りはすべてボウイ本人の言葉のみで構成されている。編集は、他の影響も勿論考えら…

クリスマス映画の要素が際立たせるもの『戦場のメリークリスマス』

『戦場のメリークリスマス』について、ここでは、この映画の日本語・英語タイトルどちらにも「クリスマス/Christmas」という語が含まれることに注目したい。これはハラの重要なセリフからであるが、それだけでなく、この映画にはクリスマス映画、クリスマス…

2人が見つめ合わない時『ザ・バットマン』

『ザ・バットマン』は主人公ブルース・ウェインのバットマン活動の二年目の姿を描く映画作品だ。バットマンが連続殺人犯のリドラーを追うにつれ、街の裏側に存在していた陰謀が明らかになる。その中で、バットマンは重要な手がかりを持つ女性セリーナ・カイ…

物語と人間の相思相愛、そして適度な距離感『アラビアンナイト 三千年の願い』

物語と人間は相思相愛だという映画だ。 ジンは4つの物語を時系列順に語るが、そこには様々な女性が登場する。もちろん男性もだが、もう1人の主人公アリシアは女性であることを踏まえると、女性の物語であることに注目させられる。二人の王子が出てくる話は関…

古い西部劇ヒーローみたいな『ブラック・アダム』

劇中、テレビに『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』(The Good, The Bad, and The Ugly)が映り、のちにはその決闘のパロディシーンもあるだけでなく、全編を通しブラックアダムは西部劇のヒーローのように描かれている。自分のやり方を曲げない、頑なでクー…